アメリカのミシガン州アナーバーで開催された「第56回アナーバー映画祭」にて情報デザイン領域・櫻井宏哉教授が「ノー・バイオレンス・アワード」を受賞しました。
受賞作品は水の躍動感をテーマにした2016年制作「The Stream VII」です。受賞理由として、現代の文化において人を楽しませるために暴力表現に依存している中で、暴力を描かず、生命を祝福している事が挙げられました。
受賞作品「The Stream VII」
「第56回アナーバー映画祭」は北米最古のインディペンデント映画祭です。1963年より開催されアンディ・ウォーホル、オノ・ヨーコ、ガス・ヴァン・サント、ジョージ・ルーカスなどの初期作品が発表された事で知られています。
毎年約65カ国3000作品が応募され、そのうち約100作品が入選し、上映されます。
また主催者による特定の映像作家の特集上映、レクチャーがあり、かつて日本の実験映画の監督である松本俊夫の特集上映も行われました。この映画祭の特色として、ハリウッド映画のような商業的な性格の表現ではなく、個人の感性で表現されるインディペンデント映画の分野とそこに含まれる実験映画を中心にプログラムが構成されてます。
ジャンルはドラマ、ドキュメンタリー、アニメーション、VR作品のほか、インスタレーションなどあり、それぞれが独自の伝え方を探求する、今までに見たことの無い表現の作品も数多く紹介されます。そのため難解な作品もありますが、新しい発想や技術の映像表現も現れることがあります。そうした表現に関心をもつ観客がアメリカ全土や世界から訪れています。
会場のミシガンシアター。1928年に建築され1700人が収容できる。
日本からの参加作家は櫻井宏哉、大力拓哉、三浦崇志、林俊作、Michael Lyonsの5名でした。
大力拓哉、三浦崇志は監督作品『ほなね』で最優秀国際映画賞(Best International film)を受賞しました。
グランプリに相当する「ベスト オブ フェスティバル」には「Watching the Detectives」監督:クリス・ケネディ(Chris Kennedy/カナダ)が受賞しました。この作品は2013年 ボストンマラソン爆弾テロ事件の際、複数の人物によるツイッターでの犯人の特定や追跡のやりとりを追った内容でした。サウンドを全く入れず、ツイッターの写真やツィートのテキストだけで構成された作品です。非常にシンプルですが現代のSNS文化を批評する優れた映像表現でした。
第56回アナーバー映画祭(56th Ann Arbor Film Festival)
会期:2018年3月20日-25日
会場:ミシガン・シアター、アナーバー、アメリカ
「The Stream VII」のダイジェスト版(1分)は以下で視聴できます。
受賞作品発表のページ(アナーバー映画祭公式サイト)
https://www.aafilmfest.org/single-post/2018/03/25/56th-AAFF-AWARDS
「The Stream VII」の紹介ページ (アナーバー映画祭プログラム)
映画祭会場のミシガンシアター行なわれたオープニングパーティの様子
ミシガンシアターのステージ。観客とステージで質疑応答する作家達
コンペティションプログラム上映後、観客とステージで質疑応答する作家達。右端は日本から参加した映像作家の林俊作さん
自作品をプレゼンテーションする櫻井教授